さて、今回は曹植の続きじゃな。詩文界における天才と謳われた彼は、この事をどう思っていたのか。その一端を見ていくとしようかのう。
案内人
くまの爺・・・三国志好きのタダの爺さん、もちろん某く〇モンとは何も関係ない(それ以上はいけない)。三国志好きが高じて史書に載っているほぼ全ての武将のDB化をしてやろうと大それたことをもくろむ。終わりの目途は・・・全く立っていない。
弟子・・・師匠の無茶な道楽に付き合わされる可哀そうな弟子。最近は張郃とのやり取りが多いせいか、無駄なツッコみは減っている模様。実は弟子と書いて「ていこ」と言う名前だったりする(師匠は最近思い出したようだ)。
張郃・・・くまの爺が一番好きな武将とお話ししたい、と謎の技術で召喚された可哀そうな人物。もっとも本人は現代生活を結構楽しんでいるよう。無理やり召喚されたためか、くまの爺の持ってる範囲の記憶しか残っておらず、ちょっと残念。
四方山話
さて、今回は曹植の続きじゃな。彼はいくつかの上奏や所管の記録が残っておるんじゃよ。
どうも、張郃だ。彼の心情がどうであったか。そう考えていくと名士との関わり合いにもまた新たな面が見えてくるのではなかろうか。
少し面白そうな話ですね、早速お願いいたします。
そうじゃな、それでは見ていくとしようかのう。
人物紹介
楊脩へあてた書簡
さて、曹植が楊脩へあてた書簡が魏志『陳思王植伝』の裴松之注『典略』に載っているんじゃよ。少し長いのではしょっていくぞい。
曹植「~前略~
辞賦はつまらぬ妓芸であって、元々立派な道義を称揚し、未来に明示するほどのモノではございません。
昔揚子雲(揚雄、前漢末の文豪)は先代漢において戟を手に侍衛に当たる臣に過ぎませんでしたが、それでも辞賦のことを『りっぱな人間の作るものではない。』と申しました。
私は徳の薄いものではありますが、列侯の位に取り立てられておりますからには、やはり御国のために力を合わせ、人民のために恵みを行きわたらせ、永久不変の功業を打ち立て、金石に刻まれるような勲功を残したいと思います。
~後略~」(『典略』)
あら、これで言うと曹植はどちらかと言えば文豪としてではなく、将として国家のために功績を残し、名を残したいと考えていたのですね。
そうだな、ただ、ここで楊脩は違う考えを示したようだな。
楊脩「~前略~
わざわざかたじけなくもお手紙を頂戴いたしましたが、その文章は見事なものでございます。繰り返し朗誦いたしましたが、風・雅・頌(詩経の三分類)であっても、もうこれ以上ではありません。
~中略~
今はと言うと王(王粲)をつつみこみ、陳(陳琳)の上を行き、数人の人(徐幹や応瑒など)を乗り越えておられ、見る者は驚きのまなこで目をぬぐい、聞くものは頭を傾けて耳をそばだてています。あのように事物の本質に通暁する能力を、自然から授けられていないならば、いったい誰がここまで到達できましょう。
~中略~
現今の賦とか頌は、古代の『詩経』の流れであり、孔公(孔子)を経過しなければ、風・雅と区別されなかったのです。私の家の子雲(前漢の文豪揚雄)は老年になっても物事の真実を理解せず、しいて一書(『法書』)を著しましたが、その若い頃の制作(賦)を後悔いたしました。
その発言通りとすれば、仲山甫・周公旦(いずれも詩の作者の一人とされる賢者)と言った者たちは皆、過失があることになるのでしょうか?
君侯(曹植のこと)には聖人賢者の明白な事述をお忘れになり、私のつまらぬ祖先の間違った発言を受けておられますが、ひそかにそのことをご思慮なさらないものかかんがえます。
国を治めると言う立派な仕事を忘れず、千年に渡る優れた名声を残し、功績を景鍾(春秋時代、功績を彫られたと言う鍾)に彫り付けられ、姓名を書物に記載されると言う点になりますと、それは当然平素からつちかっている幅広い才能の結果でありまして、文章を書くことによって妨げられるでしょうか。」(『典略』)
楊脩は曹植の文章の凄さを理解し、国のために尽くすことは大事だが、詩賦を軽んじないように忠告していたのだな。
さて、そうは言っても曹植の政治や軍事で功績を上げたい思いは強いようじゃな。曹植は223年、228年、231年と上奏し、異姓の諸侯ばかりを重んじることに懸念を抱き、皇族をもう少し重用するように、自分も命令があればすぐにでも諸葛亮や孫権を討ちに行く覚悟がある、と言うことを述べているんじゃよ。
楊脩がどれだけ曹植の詩賦の才を認めていたとしても、曹植自身は将として臣として国家の役に立ちたい、と言う思いは強かったんですね。
それだけ己の才にも自身があったのではないかな、まあ曹植殿の将才がどんなものかは見ておきたかったな。
そうじゃな、史実の曹彰・曹植と優れた人材をもっと生かすことができれば、もう少し魏の命脈も違ったことになっていたかもしれんのう。
さて、それでは今回はここまでじゃな。よければ次もご覧くだされい。
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