さて、今回紹介する人物は楊彪じゃな。字は文先、生没年は142~225年と結構長生きした人物じゃ、家は袁家同様代々三公を務めた名門で、楊彪自身も三公にのぼった、非常に優秀な人物なんじゃよ。
さて、今回紹介するのは楊彪じゃな彼は結構知名度が高い人物じゃな。
どうも、張郃だ。楊彪殿は曹操殿と折り合いが悪く、なかなか苦労していた人物だな。
確か楊脩さんの父に当たる方ですよね。
うむ、そうか、演義でも楊脩は鶏肋のエピソードなどで有名だから、楊彪殿も一定以上の知名度を持っているのだな。
そういうことじゃな。とは言え演義だけの姿では、楊彪の全体像は見えてこんかもしれん。何せ演義ではあくまでも楊脩のおまけのような扱いじゃからのう。それだけの人物でないのは確かじゃな。
皇甫嵩さんや鄭泰さんと同じような感じなんですね。
そういうことじゃな、さて、それでは早速見ていくとしようかの。
人物紹介
学者としての楊彪像
若き日の楊彪のエピソードじゃが、彼は孝廉に挙げられた上で茂才にも推挙されるんじゃ。三公からの辟召には応えなかったが、霊帝の時代に議郎から京兆尹、司徒等を務め、高い名声を博しておったんじゃよ。
『三輔決録注』によると、馬日磾は鄭玄の師である馬融の族子であり、若い頃から馬融の学問をよく受け継いでいたんじゃ。
彼は朝廷に取り立てられ、楊彪、盧植、蔡邕等と宮中の書物を校訂したんじゃ。『後漢書』盧植伝を見ていくと、この書物は『五経記伝』(五経は易・書、詩・春秋・礼を指し、記伝は礼記や春秋三伝を指すらしい)を校し、『漢紀』を補続する、とあったようじゃな。
ここで書を校訂したり補完できる辺りに、彼等の学識の深さを示しておるようじゃな。
楊脩の知識量も半端なものではなかったし、古典にも通暁していたからな。
元々楊家はそう言うのを家学として、当たり前のように叩き込まれていたのかもしれんのう。
楊彪の胆力(董卓政権下)
さて、そんな楊彪じゃが董卓の下で司空、そして再び司徒へ任じられるんじゃ。そんな中ある事件が起こる。董卓による長安遷都の議題じゃな。少々長いが内容は面白いのでそのまま載せていくぞい。
『漢書』によると董卓は長安に遷都しようともくろみ、公卿以下の官僚を召し出して、大会議を開いたんじゃ。これに対し楊彪は以下のように言って反対したんじゃ。
「昔、殷の王盤庚は五度も遷都したため、殷の民は皆怨み、それ故盤庚三篇を作成して、天下の民を教え諭しました。
現在天下は平穏であり、訳もなく遷都などすれば、恐らく民衆は動揺し、かゆが煮えくり返るように騒ぎ、アリがむらがるように集まり、反乱を起こすことになりましょう。」
董卓は以下のように反論するんじゃ。
「関中は肥沃な土地である。だから秦は六か国を併呑することができたのだ。今長安に遷都したならば、たとえ関東の強豪の内で思い切って行動を起こす者があったとしても、我が方の強力な軍隊でやつらを追い詰め、海の中まで行ってもらえるだろうよ。」
「天下はこれを動揺させるのは極めて簡単ですが、安定させるのはなかなか困難です。また長安の宮殿は破壊されており、急に復興することは不可能です。」
董卓は恐らくイラつきながら、また反論するんじゃ。
「前漢の武帝は時々杜陵に住まわれたので、その近くの終南山のふもとには、瓦を焼くかまどが数千ヶ所もある。涼州の材木を、河を利用して東に下らせ、宮殿を造営すれば、完成させるのは造作ない。」
こう言っている間に怒りが大きくなったのか、董卓は血相を変えて
「公はわしの計画を阻止するつもりなのか。辺章と韓約(韓遂)から手紙が参り、何としても朝廷に遷都を決めてほしいと言ってきている。もし、彼らの大軍が東下してくれば、わしはもう救うことができないから、公はすぐに袁氏とともに西方へ行くが良い。」
と言うんじゃ。袁氏と楊氏は丁度この時姻戚関係にあったんじゃな。しかし楊彪の胆力もたいしたもので、脅しをかける董卓に対し
「西方は元々私の故郷へ行く道筋に当たり、望むところです。ただ、このままでは天下がどうなるかわからないだけです。」と言い放つんじゃよ。
さて、これにて会議は打ち切られるんじゃが、怒り心頭の董卓はすぐに上奏し、楊彪を罷免するんじゃよ。
ここのエピソードは黄琬のところにも載っておるが、そちらのエピソードは『続漢書』に書いてある内容で、上記の『漢書』と大意は同じじゃが、微妙な違いがあるんじゃ。一度読み比べてみると良いぞい。
しかし、一歩間違えれば董卓に斬り殺されてもおかしくない状況で、臆せず自身の意見を主張する楊彪の胆力はともかくとして、意外とこの状況であっても罷免に留め、処刑をしない董卓に軽い違和感を感じるのは自分だけかのう。
別にヤツの擁護をする訳ではないが史書は基本勝者のための歴史だからな。敗者側であればどんなふうに書かれたか。それは自分も袁紹殿の下に留まり続けていたら同じであったろうよ。
まあ張郃殿の場合は蜀と対峙しておることから、現時点で既にマイナスのバイアスがかかっておるやもしれんからのう。さて、少々短いが、キリのいいとこなので、一旦ここで終わるとしようか。この後も楊彪の豪胆さはあちこちでみられるぞい。
ふむ、それでは俺も戻ろう、それではな。
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