さて、今回は虞翻の紹介2回目じゃな。今回から孫策に仕えて以降の虞翻の動きを見ていこうとしようかのう。
さて、今回は虞翻の紹介の2回目じゃな。
どうも、張郃だ。孫策以降と言うことは側近として腕を振るいだす時期の話だな。
孫策時代はそこまででもないかもしれんのう。どちらかと言えば交渉役としての役割じゃな。
それは王朗時代からもやってたことですね。
そうじゃな。さて、それでは虞翻について見ていくぞい。
人物紹介
孫策との邂逅
さて、王朗に諭され、故郷に戻った虞翻じゃが、そんな彼を孫策が再び功曹に任命しただけでなく、彼を友人として遇し、自ら虞翻の屋敷を訪れたりしたんじゃよ。
『江表伝』には、この時、孫策は虞翻に手紙を寄せて言うんじゃよ。
「現在の事態に、あなたと力を合わせつつ対処してゆこうと思う。郡の役人の一人としてあなたを遇する等と思ってはくださらぬように。」
これは一役人として他の同僚たちと同じように思ってはいない、と言う意思の表れっで、それ故友人として遇した、と言うことなんであろうな。
さて、この孫策じゃが、好んで馬を馳けらせて狩りに出ることが多かったようなんじゃよ。この辺りは父孫堅、弟の孫権いずれも似た性癖を持っているようじゃな。
さすがにこれはあまりにも無鉄砲と言うことで、虞翻はこれを諫めるんじゃよ。
「太守さま(孫策)は烏合の衆を用い、離合集散してままならぬ兵士達を駆り立てて、それぞれに力いっぱいの働きをさせておられますが、この点では漢の高祖(劉邦)も太守様には及びません。
ただ、軽々しく外出をされ、お忍びで出歩かれますことについては、お付きの者達に警戒を整える余裕もなく、不慮の事故を心配して役人や兵卒たちが常々心を苦しめておるところでございます。
人の上に立たれる者は重々しく動かね威厳が備わらず、それ故白い龍も魚に姿を変えていた時には漁師の豫且(よしょ)に苦しめられ、白帝の子の蛇も油断をしている内に劉季(劉邦)に殺されることになったのです。
どうかいささかなりともお心配りをいただけますように。」
じゃが、孫策も虞翻の心配は分かっておるが、次のように返したんじゃ。
「あなたの言われるところは重々もっともだ。ただ時に心中に思うところがあって、しかめつらしく坐っていると心が鬱屈してくる。
春秋時代、鄭の大夫の裨諶のように野原の真ん中で将来を思いめぐらせたいと考えて、野外に出るのだ。」
結局は虞翻の心配が的中してしまった訳だからな。魏の郭嘉も孫策の行く末を見極めていたように、一国の国主としては軽い部分があったのかもしれんな。
孫策の場合その行動力こそが、短期の内にあれだけ勢力を広げることができた、大きな要因と言えたじゃろうから、この辺りは難しい話じゃの。
『呉書』によると、山越を討伐した時に側近たちを手配して賊徒たちを追わせたんじゃよ。そして孫策は一人で馬を歩ませていたんじゃ。
山の中に虞翻がばったり出会ったことで、虞翻は孫策に周囲に注意させながら先導し、開けた場所に出たところで兵を集め、この時は事なきを得たんじゃが、孫策の動きには危うさを感じさせるものがあると言えるじゃろうな。
華歆への交渉
『江表伝』によると孫策は黄祖を討伐すると、帰途の途上予章に回ってそこを手に入れようと考えたんじゃよ。
そこで虞翻一人を召し寄せて言ったんじゃ。
「華子魚(華歆)は彼なりの評判を持っているが、私の敵ではない。
加えて聞けば、兵器の準備も甚だ乏しいとのことだ。もし彼が城門を開いて城を明け渡さぬ時には、戦闘の合図の鐘や太鼓が鳴らされて、死傷する者の出ることは避けられぬ。
あなたは先に行って、私の意を彼にはっきりと伝えて欲しい。」
虞翻はすぐに出発すると、まっすぐ予章郡の役所に向かったんじゃ。
そしてひとえの葛布の頭巾を着けて華歆との会見を申し入れるんじゃよ。華歆に会うと虞翻は率直に言うんじゃ。
「あなたは名声が天下に聞こえていると言う点で、ご自身と我が郡の元の王太守さまとどちらが勝ると思いますか。」
華歆は言うんじゃよ。
「私の方が及ばない。」
更に虞翻は畳みかけるんじゃよ。
「食糧の蓄えの量、兵器の精鋭さ、兵士や民衆の勇敢さの点で、我が郡と予章郡と、どちらが優れるでありましょう。」
華歆はこれにも同じように言うんじゃよ。
「私の方が及ばない。」
交渉と言うよりはほぼ脅しのような感じだがな。まあ虞翻の性格を考えると、わざわざ迂遠な言い回しはしないであろうがな。
これを受けて虞翻は華歆に以下のように進言するんじゃ。
「討逆将軍(孫策)様は智略の点で世に並ぶ者もなく、用兵の巧みさは神の如くであります。
先に劉揚州(劉繇)殿を逃亡させたことについては、あなた自身が目にされたところであり、また南に進んで我が郡を平定されたことについても、あなたが聞いておられるところです。
ただいま孤立無援の城に立てこもろうとしておられますが、食料のことだけを考えてみましても、死守することなど不可能であることが知られるのであります。」
と言って、華歆を説得するんじゃよ。
虞翻が去った後、華歆は次の日の朝に城を出ると、役人をやって降伏を申し入れ、孫策を迎え入れたんじゃよ。
さて、孫策編まで、これまたキリの良いところまで進んだことで、今回もここで一旦終わりとしようかの。次からは孫権時代の動きを見ていくとしようかのう。
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